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うつ病治療の新しい選択肢:磁気刺激治療(TMS)の最新情報

うつ病治療の新しい選択肢:磁気刺激治療(TMS)の最新情報

2025/12/05

うつ病治療の新しい選択肢:磁気刺激治療(TMS)の最新情報

近年、うつ病の新しい治療法として注目を集めているのが、TMS(経頭蓋磁気刺激)治療です。

これは、手術や麻酔の必要なく、頭の外から特別な磁気の刺激を与えて、うつ病で働きが弱くなった脳の部位(主に前頭葉)を活性化させることで、症状の改善を目指す治療法です。

「薬が効きにくい」「薬の副作用がつらい」といった方にとって、有効な選択肢として期待されています。

なぜTMS治療が注目されているの?

最近の研究で、「どの場所を」「どれくらいの強さで」「どれくらいの回数」刺激すれば最も効果が出るか、ということがわかってきており、従来の治療よりも早く、高い水準でうつ病の症状を改善できる可能性があるという報告が増えています。

ここでは、特に注目されている最新のTMS治療のプロトコル(方法)を、わかりやすくご紹介します。

「超短期・集中的な改善」を目指す最新プロトコル

1. SAINT / SNT(セイント/エスエヌティー)

これが研究で高い治療効果が報告されている方法の一つです。

治療期間     

5日間

刺激回数

従来の何倍もの量を、1日複数回に分けて集中的に刺激します。

各セッション1,800発(合計90,000発)を約50分間隔
治療効果

研究では60〜90%という高い水準でうつ病の症状が大幅に改善(寛解)したという報告があります。

 

 

 

 

 

「短期間で集中的な改善を目指したい」というニーズに応える治療法です。ただし、この治療を受けるには、MRIで一人ひとりの脳の正確な刺激部位を特定したり、1日に複数回通院したりする体制が必要になります。

現在の「標準」として広く使われているプロトコル

2. 標準的なiTBS(アイティービーエス)

現在、世界で最も広く行われている標準的なTMS治療です。

治療時間    

1回の刺激にかかる時間は約3分と非常に短いのが特徴です。
刺激回数 1日1回行われます。
治療効果 従来の刺激方法(1回約40分かかる方法)と比べても、効果は同等であることが大規模な研究で証明されています。

 

 

 

 

短時間で治療が受けられるため、生活に取り入れやすく、多くの医療機関で導入が進んでいます。科学的根拠(エビデンス)が強い、確かな治療法です。

症状や体制に応じて選べるその他のプロトコル

3. 両側TBS(右と左を刺激)

脳の右側を抑える刺激と、左側を元気にする刺激を組み合わせて行います。不安やイライラが強い方など(右前頭皮質過活動を示す症例)に対し、有効性が期待され、メタ解析でもその効果が支持されています。

 

4. deep TMS(ディープTMS)

特殊なH1コイルを使い、従来のTMSより深い部分まで磁気刺激を届けます。系統的レビューでは、従来のTMSより反応率が高いとする報告があり、広域な刺激効果が評価されています。

 

5. 接続性ガイドTMS(fMRIを活用)

治療前にfMRI検査を行い、**一人ひとりの脳の「つながり」**のデータをもとに刺激部位を調整します。理論的には期待されますが、大規模なRCTであるBRIGhTMIND試験では、標準的なrTMSと比べて明確な優越性は示されませんでした。

 

まとめ

■ 最も成績が良いとされるのはSAINT/SNT(個別化・高用量・加速iTBS)。寛解率が突出しており、FDA承認も得ています。

■ **臨床の標準はiTBS(左DLPFC, 600発/日)**で、非劣性RCTのエビデンスが強固。

■ 症例に応じて両側TBSやdeep TMSを考慮する選択肢もあります。

いずれの治療法も、安全性は概ね良好ですが、稀に気分が一時的に高まりすぎる(躁転)といった報告もあります。TMS治療の専門知識と経験が豊富な医師としっかり相談し、ご自身の症状や生活スタイルに合った方法を選ぶことが何よりも大切です。

参考文献

Cole EJ, et al. Stanford Neuromodulation Therapy (SNT): Randomized controlled trial. Am J Psychiatry. 2022;179(2):132–141.

Cole EJ, et al. SAINT protocol: Double-blind RCT. Am J Psychiatry. 2023;180(2):90–99.

Blumberger DM, et al. iTBS vs 10Hz rTMS (THREE-D trial). Lancet. 2018;391(10131):1683–1692.

Cheng CM, et al. Bilateral vs unilateral TBS: Meta-analysis. Psychiatry Res Neuroimaging. 2023;329:111608.

Trevizol AP, et al. Deep TMS vs rTMS: Systematic review. Psychiatry Res. 2024;332:115379.

Singh A, et al. BRIGhTMIND trial: Connectivity-guided TMS. Nat Med. 2022;28:2300–2307.

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